日本小児アレルギー学会が吸入ステロイド薬(ICS)による小児ぜんそくの長期管理について基本的見解。ベネフィット(症状の改善等)とリスク(長期使用による小児の成長抑制)を考慮した使用判断が必要。
いくつかのネット記事で紹介されていましたが、日本小児アレルギー学会が、喘息の患者さんに使われている吸入ステロイド薬による小児ぜんそくの長期管理について、報告をしています。
◆小児アレルギー学会の報告
日本小児アレルギー学会 - 吸入ステロイド薬 (inhaled corticosteroid; ICS)による小児喘息の長期管理について
◆関係のネット記事
吸入ステロイド薬、身長の伸びを抑える可能性 子供への投与は慎重に
日本小児アレルギー学会は、子どもの気管支ぜんそくの治療で広く使われている吸入ステロイド薬を、より慎重に使うよう注意喚起する声明を出した。
子どもの吸入ステロイド薬、慎重に 身長伸び抑える恐れ:朝日新聞デジタル
身長の伸びに最も影響を受けやすいとされる乳幼児は、軽症ならばステロイド以外の薬を最初に使うと指摘
小児喘息の治療薬ICSの副作用で身長が伸びにくくなる可能性 | リセマム
私も日本小児アレルギー学会の報告を読んでみました。専門家ではないため、正確性に不安はありますが、おおむね次のようなことだと理解しました。(正確には報告書をご覧ください)
吸入ステロイド薬(ICS)を使うことによるベネフィットとリスクを比べて、ベネフィット>リスクでなければ、ICSを使用すべきではない。ベネフィット/リスクの観点から使用を判断すべき。
吸入ステロイド薬のベネフィット
・臨床的に症状の改善に伴うQOL(生活の質)の向上
・生理学的に肺機能・気道過敏性の改善
・病理組織学的に気道炎症の改善
→ICSの適切な使用が、重症患児の減少、発作による入院数の減少、ぜんそく死の減少をもたらした原動力の一つになっていることは事実と考えられる。
吸入ステロイド薬のリスク(最近の問題提起)
・ICS使用による乳幼児の成長抑制(5-13歳の小児に4-6年間ICSを使用した場合、成人に達した時の身長が平均-1.2cm(男子-0.8cm、女子-1.8cm)低かったという報告他1件が紹介されています。)
上記の観点から、報告書では、
・中等症持続型(喘鳴が週に1回以上の頻度で長期間継続しておきる)以上の重症度を有する喘息患児では、QOLの観点から年齢にかかわらずICSを第一選択とすることが適切
・乳児ぜん息で明らかにICSによるベネフィットが得られる患児においても低年齢で体重が小さい場合にはリスクが高くなる可能性が指摘されていることから、吸入量設定により慎重な対応が必要
としています。
今回の件については、まだ明確になっていない部分もあるようで、一律にどうすべきといったことまでは踏み込んでいませんので、患者としてすべきこととしては、不安を感じれば、かかりつけの医師に相談することが最善の対策と言えます。
今後研究が進み、よりはっきりとした対応ができるようになることを願いたいと思います。